2020-05-30 12:30:16

Engineering Manager とはやっぱりコマンダーバトルなのではないか

Engineering Manager (以下 EM) を始めて二ヶ月くらい経った。依然として EM というものはいったい何なのかを考え続けている。

引き続きもやもやしている

弊社 (Quipper) において EM が最低限こなさなければならない「義務」のようなものは概ね把握してきた。
それは第一には「メンバーの評価」であり、第二には「採用活動」である。これらは将来変わるかもしれないが、いま時点においてはこれらが EM の仕事といって差し支えないように見えている。実際、業務時間のだいたいはこれらに関する何かで時間を使っている。

さて、4 月に EM になってから 5 月末に至るまでずっと「もやもやした不安」を感じていた。
それは「EM になったはいいけど、EM ってどういう仕事する人なんだっけ」っていうのをよく分かっていなかったからだと思っていたのだけど、先述のようにそのへんが概ね明らかになってきたにも関わらず、やはりもやついた気持ちが晴れてこなかった。いったい僕は何を不安に思っているのか。天が落ちてくることでも心配しているんだろうか。

そんな悩みとも何とも言えない晴れない気持ちを、たまたま目の前 (※ やりとりは Slack なので目の前というのは少し語弊がある) にいた @ujihisa さんに相談してみた。
僕が思うに、ujihisa さんはもやもやした形の曖昧な気持ちや事象に「名前をつける」であるとか「モデル化して可視化してくれる」であるとかのチカラが凄いんである。けれどそれは本稿では割愛して、また別の機会に分析してみたいと思う。ほんと凄いんですよ、ええ。

そんで、もやもやを五月雨式に ujihisa さんに向かってダンプしていくうちに、だんだんその不安の正体がつかめてきた気がしてきた。
端的に言うと、「プロダクトに対する貢献感が少ないことに対して焦っている」んじゃないか、ということであり、つまりもうちょっと砕いて言えば「あんまりコード書いてないから"やってる感"を感じない」ということでありそうな気がする。
確かに、僕が近頃こなしている数々のミーティングや採用活動は、直接プロダクトを良くしているわけではないと感じている節がある。EM になる以前はもっとプロダクトへの直接的な寄与をできていたと思うし、それといまとのギャップも相まって「こんな仕事してて良いんだろうか」って考えてしまうってことなんじゃなかろうか。

しかし実際のところ、チームメンバーが鬼強い人たちばかりであるので、僕があんまりコードを書かなかったところで特に何も問題は起きないという一面がある。何もしなくて良いのである。
このシチュエーションはマネージャから見たらイージーモードと言えるのかもしれないが、ただ、そういう意味では「やっぱ自分はあんまりチームの役に立っていないなぁ」みたいなことも考えてしまうやつなのである。

うだうだ書いたが、つまり一言で言って「プロダクトを作っている感がなくて虚無を感じている」ということかと思われる。うむ。

その虚無は本当に虚無か

評価にせよ採用活動にせよ、はたまたコードを書くにせよ、それらは誰かがやらねばならないし、大きな価値のある尊い仕事であると思う。どっちの仕事が優れててどっちが劣っているという話ではない。
なので、僕が最近の自分自身の仕事に「やってる感を感じてない」とはいえ、それらには一定の価値があろうとも思う。断じて虚無ではない。

問題は「自分が思い描く寄与の形と、現実にギャップがある」ことで、それがつまり「仕事がつまらん」みたいな感情に繋がりつつあることである。
とはいえこの構図は、「やりたいことをやりたいようにやることが寄与に繋がってきた」今までの体験が、ロールが変わることによって一部崩れてしまい、その変化に対してダダを捏ねているようにも見えなくもないね…。みたいなことにも気付きつつある。

というわけで、目下は「どのようにやってる感を感じるか」というのがひとつ課題なのかと思う。自己効力感というか何というか。
ujihisa 曰く、「プロダクトに時間が割けない中でプロダクトへの効力感を感じるには、周囲に助けてもらって自分にプロダクトの仕事をさせてもらう」のが良いのではないか、である。
なるほど、何か難しそうであるが、これならメンバー評価の仕事をしつつ、自分もプロダクトに寄与していけるような気がしないでもない。助けてもらう前提 (ペアやモブ作業を行うという意味) であれば、たとえ割ける時間が少なかったとしても、多少なりとも自分が納得していけるような活動になっていく気がする。

一方で、言わば「プロダクトへの間接的な寄与」(直接的な寄与、と先述したのでそれに対するものの表現) に対しても同様の尊みを自分自身が感じていくのも大事かなぁと思う。
コミットログや GitHub の草のように可視化されるものでもないし、どのように達成感を得たらいいんだろうか。ここはもう少し分析や考察がいるところ。

ロマサガ 3 のコマンダーバトル

ところで、ロマンシングサガ 3 にはコマンダーバトルという戦闘モードがある。一言でいうと「主人公は直接戦わなくて後ろからざっくりとした指示を出す」モードである。
当時としては割と斬新な戦闘システムだったかと思う。二周目のプレイとかはコマンダーバトル縛りでやったような記憶がある。サラを主人公に選ぶとラスボスで強制的にコマンダーバトルになったりするけどあれはちょっとあんまりだと思った。少年も仲間だったんですけど没収されてしまうし。いま思うとホントひどいなこのゲーム…。好きだけど。

ちょっと記憶が曖昧だけど、コマンダーバトルというのはたしか各位に細かい指示は出せないんだった気がする。全員戦うとか全員守るとかの方針を決定するのと、どんな陣形で戦うかっていうのと、陣形技っていう複数人が連携する技を指示するとか、あとは主人公が後ろからアイテムを使うことができる、くらいだった気がする。
不自由かと思いきや、いくらかメリットもあり、コマンダーバトルではパーティメンバーは毎ターン HP 回復するし (戦闘不能だったら HP 1 で復活する) 、陣形技は超強力。軌道に乗ってくると通常の戦闘モードよりもコマンダーバトルのほうが安定するまであるような気がするし、だんだん楽しくなってくる。あと楽。

少々こじつけかもしれないが、EM の仕事というのはある意味コマンダーバトルみたいなところがあるのではないかと思う。 EM は直接敵と戦うわけではないが、戦況に鑑みて陣形と作戦指示だけしていく、みたいな。まさに同じ構図。そっくりじゃないか。俺はサラだったのか。まあなんというかね、コマンダーバトルはものすごい好きになることができたので、これもやはりこじつけかもしれないが EM の仕事も好きになれるんじゃないかと思っている。きっと僕の仕事は後ろから火星の砂とかを使って地相を変えることなんじゃないかな。どちらかと言うと寒い感じの地相にするほうが得意かもしれないが。

以上をふまえた 6 月の取り組み

  • ペア/モブ作業を通してプロダクトに多少は寄与していく
  • ミーティングをコンパクションしてプロダクトへ寄与する時間を増やす
  • 地相を変える仕事に尊みを見出す

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