2021-06-07 20:28:17

「リーダーの仮面」を読んだ感想

「リーダーの仮面」という本が本屋で平積みになっていたもんで、それじゃあってことで読んでみた感想。

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自分自身がもっとリーダーらしくあるために等と思って手に取ったわけではない。エンジニアリングマネージャとしての自分の振る舞いになんらか足しになるかもしれない、何かの気付きになればいいかな、くらいの気持ちで読んでみた。割とさっくり読めて1時間~2時間くらいで読み終わった。

賛否両論ありそうな内容だなーと思った。最近のマネジメントの風潮 (ホラクラシーであるとかティール組織であるとか) をそれなりに否定するようなことが書かれている。なのでこれ一冊を読んで「よーしこれの通りにやってみるぞー」みたいに思ってしまったりすると、導入の仕方によっては組織に “合わない” ということもありえそうだなと感じた。目標管理を数字で管理するということも書かれていたが、目標を数字にしにくい仕事 (ソフトウェアエンジニアなんかはそうだと思うんだが) だと適用しにくかったりしないかな、なんてことも思う。

気になった点をちょっとピックアップしてみると、

  • リーダー (ちなみにマネージャと読み替えて読んでいた) はメンバーと距離を置くべきで、仲良しにならないほうがいい (1on1 も否定されていた気がする)
  • なるべく機械的に評価をする。プロセスをことさら評価することはせず、結果を見る。未達ならじゃあ次はどうやって改善するのか、達成ならそれはあたりまえとして扱ってやたら褒めたりすべきでない、というような振る舞いをする
  • メンバーのモチベーションをどうにかしようと思わなくてよい。それはリーダーの仕事ではない (会社とメンバーが成長していればそれでよい)
  • リーダーは短期の成果ではなく未来を見据えて采配する。待つ。

ここにピックアップしたものについて自分はひとつも実践していない気がしていて、本書の言葉を借りれば「リーダー失格」でありそう。1on1 毎週やってるしプロセスめっちゃ見るし (そもそも未達とか達成とかの基準すら定義していない)、モチベーションが大事だと思うのでモチベーション下がる要因とかヒアリングしたりするし。
未来を見据えて~というのはそれはそうだなと思った。うん。

数値で目標を管理するという点は、チームで測っているベロシティなんかは物差しとして使えるのかもしれない。でもこれもなんというか、達成すべき数値目標というよりは “チームの実力測定器” みたいなところあるしな。ちょっと文脈と合わないかもしれない。

仮面をかぶる

やや本を否定するようなことを並べてしまったが、参考になる話も多かった。例えばちょっとメタにとらえて「仮面をかぶる」という話はとても参考になった。
人は誰しも時と場合によって人格を使い分けている。家庭内なら父とか母とかのロールがあるわけだし、転じて職場ならマネージャやプレイヤーだったりする。属するコミュニティによって “ペルソナ” は変わる。組織でマネージャやっていれば場合によっては冷たいことを言わなければならないこともあり、結果として嫌われることもあろうが、それはペルソナの関係上そういうものであって、人格が否定されたわけじゃないから落ち込む必要はないんだよ、と。まあ分かる。

まあ分かるんだが人間そんなに割り切れるもんか?と思わんでもない。コードレビューはコードについて話をしているので書いた人の人格を否定するものではないのだが、それでもあれで心を傷める人類が後を絶たないっていうのと同じことで、ペルソナの話は観念的には理解できるものの、実態としてそこまで人類は高尚ではないよなぁ、と思わんでもない。

とはいえマネージャは仕事を全うするために、嫌われることを厭わず、言うことを言わなければならない場合もあろうというのは確か。自分はもうこれに関しては「嫌われて落ち込んで復活するまでが仕事」くらいのことを思ってたりする。割り切れてないな。もう少し経験を積んだらこのへんの感じ方や考え方も変わるんかねー、なんてことも思いつつ。

自主性に任せること

メンバーの自主性に任せてあまり細かなマネジメントしない、というスタイルにもやや否定的な論調で触れられていた。これだと成長する人は成長するが、そうでない人は置いてきぼりになってしまうよね、と。これはね、分かる気がする。新しい人とかはほったらかしにできるわけないしね。分かる。

割と自分はほったらかしにしがちな自覚がある。ほったらかしで成長する人はそれで良いんだけど、そうでない人に対しては本書で述べられているアプローチが効くパターンありそうかなーって思ったりした。使い分けが大事なのかもしれない。

総評

少なくとも直ちに自分 (と自分のチーム) に取り入れるには合わなそうな部分が多いかも、と感じたものの、なるほどこういう考え方もあるのね、という、リーダー (マネジメント) の考え方のひとつのカットとしては大いに参考になる内容だった。近頃の組織論とは結構切り口が違うと思うので、こういった本があるのも良いよね、って思いましたです。

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